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自分の部屋のニオイを判別する方法

自宅のニオイ 判別方法」「科学的根拠に基づくニオイ診断法」の見出し。A・B・Cと書かれたジップ袋3つと虫眼鏡で“比較して特定”する図。下部の濃紺帯に「コーヒー豆ではリセット不可能? 恋愛雑学
この記事は約20分で読めます。

「外の空気を3分吸って戻る」
「コーヒー豆の香りを嗅ぐ」
そんな巷に溢れる嗅覚リセット法を試して、本当に「自宅のニオイ」を確信できたことがありますか?

おそらく、答えはNOでしょう。

これは嗅覚が衰えているわけではありません。

「自分の家のニオイが分からない理由」
脳が自宅のニオイを「無害な背景音」として処理し、完全にシャットアウトする「長期順応」という名の、生理的なロックがかかっているからです。

このロックは、数分外気を吸った程度では解除されません。

本記事では、主観や勘に頼るのを一切やめます。

国際規格(ISO)や官能評価の現場で採用される「三点比較式(ABC方式)」を、家庭にあるジップロックとストローだけで再現し、隠れたニオイを強制的に炙り出す手順を解説します。

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この記事でわかること
  • リセット法の真実
    コーヒー豆等に科学的根拠がない理由
  • 3分外気の落とし穴
    自宅の臭いに「数分」が通用しない原因
  • ABC方式の実践
    袋とストローで鼻の麻痺を突破する手順
  • 5つのニオイ解析
    特定した臭いの正体をタグで定義する
  • 改善の仕組み化
    1行の記録で「感覚頼り」を卒業する方法

「自分の家が臭いかもしれない」という正体のない不安を、今日、「論理的な確信」へと変えましょう。

嗅覚リセットは嘘?コーヒー豆や「外気3分」が自宅で機能しない理由

「コーヒー豆の臭いで嗅覚をリセット」
「肘の内側のニオイを嗅いで嗅覚をリセット」
こうしたやり方で嗅覚をリセット出来ると見聞きしたことはありませんか?

あたかも効果があるように語られていますが、これらに科学的な根拠はありません。

【検証】コーヒー豆に「鼻を戻す」効果はない

コーヒー豆・レモン・無臭空気のいずれかを嗅がせて識別課題を行った研究では、コーヒー豆による嗅覚リセットの効果は確認されませんでした(1)。

目的「コーヒー豆を嗅ぐと嗅覚がリセットされる」という主張が、識別成績の改善として確認できるかを検証。
方法香り刺激で順応を起こした後、次の試行前に「コーヒー豆/レモン/無臭空気」のいずれかを嗅がせる。
指標香りの識別課題(odor identification)の成績(例:正答率など)。
結果の要点コーヒー豆条件が、レモン条件や無臭空気条件より識別成績を改善したとは言えなかった。

出典:Grosofsky, A., et al. (2011). “Coffee beans: A tool for resetting the nose?”. PubMed.

つまり、特に効果は見込めないという結果です。

自分の肌を嗅ぐリセット法も「ただの気分転換」

自分の肌のニオイを嗅ぐ手法についても同様です。

有効性を直接示す査読研究や、国際的な標準手順としての位置づけられているものはありません(2)。

主張肘の内側(自分の肌のにおい)を嗅ぐと嗅覚がリセットされ、次のにおいを正確に評価できるという説。
根拠の位置づけ主に試香のコツとしてのTips(情報記事・接客ノウハウ等)で流通しているが、方法の有効性を直接検証した査読研究や国際規格としての標準手順は確認しにくい。
標準側の重心官能評価の実務ガイドでは、リセット小技よりも「短く嗅ぐ/頻繁にしない」など順応・疲労を避ける運用制御が重視される。
また、試験環境は余計な臭気を排除する設計が推奨される。
読み替え肘の内側は「中立に感じやすい」として使われることはあっても、嗅覚を確実に回復させるリセット法としては位置づけにくい。

参考:Glamour UK. “How to improve your sense of smell”.(Tipsとしての流通例)
参考:DLG. “Practice guide for sensory panel training, Part 1”.(運用制御の実務指針)
参考:ISO. ISO 8589:2007(臭気排除を含む試験環境設計の考え方)

これらの手法は、物理的なリセットというよりも、心理的な切り替えとしての側面が強いと言えます。

つまり、ただの気分転換です。

プロが実践する「嗅覚を麻痺させない」2つの鉄則

国際規格に基づく評価や、学術的な嗅覚測定に携わる専門家、つまりニオイのプロはどうニオイを判別しているのか。

少なくとも、リセットのために別のニオイを嗅ぐことはしません。

重視されるのは下記の2点です。

  • 「測定対象のニオイを含まない、フラットな空気環境」の構築
  • 「嗅ぎ方のルール」の徹底

①別のニオイで上書きせず「ゼロ」に戻す

官能評価の鉄則は、測定を妨げる余計な臭気が入り込まない「無臭に近い環境」を整えることにあります(3)

別の強いニオイで上書きするのではなく、一度刺激をゼロに戻すことが、感度を保つための大原則です(4)

②嗅覚の疲労を避ける「吸い方」の制御

鼻の疲労や順応を避けるため、実務ガイドでは以下の運用が推奨されています。

項目具体的な運用理由
吸気の長さ短く、軽く嗅ぐ長く嗅ぎ続けるほど、嗅覚は急速に麻痺するため(5)
試行の間隔頻繁に行わない連続した刺激は感度を鈍らせ、わずかな差の判別を困難にするため(6)

これらはカメラのシャッターを切る瞬間のように、一瞬の鮮明な情報を捉えるための知恵です。

感覚を研ぎ澄ませるのではなく、「感覚が鈍る前に、作業を終える」

この逆説的なアプローチこそが、確実なニオイ特定を支える土台となります。

自分の家の匂いがわからない原因「長期順応」の壁

臭いが分からない原因が、「嗅覚の短期順応」であれば対処は簡単です。

■嗅覚の短期順応とは?
同じ匂いを一定時間(数十秒〜数分程度)嗅ぎ続けることで、脳がその匂いを「背景のノイズ」として認識し、感じにくくなる一時的な生理現象。

同じ種類の匂いには順応するが、異なる匂いにはすぐに反応できるのが特徴です。(7)。 

一時的な生理現象なので、刺激を止めれば数分以内に嗅覚は回復し始めます(8)

この「一時的な生理現象」をリセットし、対象のニオイを判断するための基本的な流れは以下の通りです。

外気3分リセット方法
  • 離脱
    環境の隔離

    対象となるニオイが漂う空間から完全に離れる。

  • 3分
    回復時間の確保

    3分程度外気を吸う。
    この時間が長い程、ニオイの強さを正確に評価できる土台が整います(9)

  • 短く1回
    1度だけ軽く嗅ぐ

    ニオイを判別したい場所に戻り、1回だけ短く軽く嗅ぐ(5)。

    何度も繰り返し嗅ぐ「追い嗅ぎ」は厳禁。

    この「短く嗅ぎ、頻繁に行わない」というルールを徹底することで、一時的な嗅覚の麻痺による見落としを回避できます(6)。

しかし、この方法が通用するのは、「短期順応」の場合のみです。

外出先など普段嗅がないニオイであればこの方法でも一定の効果は見込めます。
しかし自宅の部屋となれば話が変わります。

■嗅ぎ慣れ過ぎた自宅のニオイ
自宅のように長時間にわたり嗅ぎ続けたニオイは「短期順応」ではなく長期順応」というもう1段上のステージになっている可能性が極めて高いです。

こうなると「わずか数分の外気リセット」だけでは不十分です。

この「難敵」を攻略するためには、さらに踏み込んだ判定システムが必要となります。

【実践】部屋のニオイを特定する「ABC方式(ジップ袋法)」の全手順

毎日過ごす自宅のニオイは自分ではわからない。

これは「長期順応」と呼ばれる現象が、嗅覚のシステムに深く影響を与えています。

この結果、慣れ親しんだニオイ程感じる事が出来なくなります。

数週間にわたって同じニオイ環境で過ごすと、脳がその刺激を「背景」として処理し、感度を大幅に低下させる現象。

■短時間ではリセットされない
刺激を止めた後も感度が回復するまでに最大で2週間ほど要した例が報告されています(10)。

「自分の部屋のニオイが分からない」

この状態でのニオイの判別に有効なのが「三角試験」と「強制選択法」です。

簡単にまとめると、3つのサンプルから1つだけ仲間外れを選ぶ、プロの現場でも採用されている方法です。

対象のニオイの有無や強度。
それ1つでは判断しにくくても、比較対象があれば有無も強度もわかりやすくなり、部屋のニオイ判別に極めて有効な手段です。

AとBとCに「識別できるほどのわずかな差」があるかどうかを統計的に判定するための手法。

2点比較法との比較

特徴内容
偶然の正解率が低い正解率が1/3(約33%)であり、2点法(1/2)に比べて当てずっぽうによる誤判定を減らせる。
微細な差の検出「どこが違うか」を特定できなくても「違う」ことが分かるため、総合的な差を検出するのに有効。

原材料の変更や製造工程の効率化を行った際に、製品の味や香りが変わっていないかを検証する「品質管理」や「製品開発」の現場で広く利用されています。

判定の極意:迷いを捨てる「強制選択法」とは?

ニオイの判定において最も重要なルールが、「どれも同じ」「わからない」という回答の禁止です。

3つのサンプルの中から、最もニオイが強いものを必ず1つ選ぶ

この「強制選択(Forced-choice)」という手法は、国際的な嗅覚測定の標準手順(ASTM(11)やISO規格)(12))として厳格に定義されています。

迷いを捨てて1つを選ぶことで、無意識下にあるわずかな知覚の差を見付けることが可能になります。

ジップロックで「隠れた臭い」を炙り出す3つの工程

具体的に何をどう使って部屋のニオイを判別するのか。

まず準備する物は2種です。

ジップ付き袋×3枚
●市販のジップロックのような空気を閉じ込められる袋。
●同じサイズの新品。
●イージージッパー(イージーレール)のように、スライドで簡単に開閉が可能な物を用意。

個包装された新品のストロー×3本
●1本1本が包装されているタイプを用意。

簡単な流れ
  • 袋Aと袋Bにニオイが強くない外気を閉じ込める。
     ↓
  • 袋Cにはニオイが気になる場所の空気を閉じ込める。
     ↓
  • それぞれの袋の端を少し開けてストローを入れる。
     ↓
  • それぞれの袋を少し押して鼻に向けて袋内の空気を当て臭いを嗅ぐ。
     ↓
  • ニオイが強い袋を1つだけ選ぶ。
     ↓
  • 偶然を防ぐために3回繰り返す。
     ↓
  • ニオイの種類を判別する。

それぞれの工程を詳しく説明していきます。

① 採取:新鮮な空気を30秒以内に閉じ込める

袋は必ず新品を使用します。

袋Aと袋B(基準)には、ニオイが少ない場所の空気を少し袋が膨らむ位に入れます。
(玄関の外やベランダなどで部屋以外のニオイが少ない場所を選ぶ。)

袋C(ターゲット)には、調査したい地点の空気を入れます。

この際、それぞれの袋にA,B,C程度でいいのでメモを書く。

次の工程で3つの袋をシャッフルしますが、シャッフル後の答え合わせのためのメモです。

■注意点
周辺の空気は常に変動しているため、各地点での採取はそれぞれ30秒以内で行うのが目安です(13)

ジップロックは原材料でありポリエチレンのニオイ(ビニール臭い感じ)がする場合あります。

袋のニオイを消す方法
  • 風にさらす(最も推奨)
    袋の口を開け、数日間風通しの良い場所に置いておくと、揮発成分が飛んでニオイが自然に薄れます。
  • 中性洗剤で洗う
    急ぎで使いたい場合は、食器用洗剤で内側を軽く洗い、よく乾かしてください。
  • 重曹や塩で吸着する
    頑固な場合は、少量の重曹水または塩水を入れて数分振ると、粒子がニオイ成分を吸着します。

ニオイの原因と安全性

項目 内容
主な原因製造時の熱加工によるポリエチレンの揮発臭。
(メーカーは「フレッシュバッグの香り」と呼ぶこともあります)
安全性旭化成(ジップロック製造元)によると、洗わずにそのまま使用しても衛生上の問題はありません(14)
注意点高温の熱源に近づけると異臭(焦げたような臭い)が発生し、変形の原因になるため避けてください。

② 鮮度:成分が変質する前に測定を開始する

空気を入れてから30分以内に測定する。

測定の際には、どの袋がどこの空気かわからないように、シャッフルしてから行う。

この際A,B,Cのメモが目に入ってしまわないようにするために、メモ書きは小さく書くのがおすすめです。

■注意点
家庭用の保存袋は、研究用の専用バッグに比べて気密性や吸着の不確実性が高くなります。
採取後のサンプルが時間の経過とともに変質する可能性があるので、可能な限り早く測定が求められます(15)

■注意点
判定はどの袋のニオイを嗅いでいるのかわからない状態で行う。
Cの袋だから臭いに違いないという思い込みを排除するためです。

③ 所作:ストローを使い15秒間隔で比較する

袋の端のみ開けてストローをさします。
袋を軽く押し、ストローから出てくる空気を短く1回嗅ぎます。

次の袋を嗅ぐまでには、必ず15秒から30秒の間隔を空けてください(16)

ストローは袋1つに付き1本で使いまわさない。

■15~30秒空ける理由
嗅覚の疲労を防ぎ、比較の精度を保つための標準的なインターバルです。

■ニオイが混ざるのを防ぐ
プロの現場ではニオイを鼻に向けて仰ぐやり方が採用されていますが、家は研究施設と違い完全な無臭空間ではありません。

ストローで空気を押し出す方が、既にある家のニオイと混ざるのを抑え効果が見込めます。

■袋のニオイを防ぐ
また、袋を開けて鼻を入れて嗅ぐと袋の原材料(ポリエチレンなど)が邪魔をする可能性が考えられます。

直接鼻を袋に入れるのではなく、ストローを使い鼻に向けて空気を押し出してニオイを嗅ぐことでそれらを防ぐ効果が見込めます。

実体験アドバイス
最初はストローを使わずに袋の隙間に鼻を突っ込んで嗅いでみたのですが、見事に失敗しました。

ジップロックのビニール臭が混ざってしまい、肝心の部屋のニオイがわからなくなったからです。

正確に判定するなら、この「ストロー1本の手間」は絶対に省かないでください。

④ 決断:曖昧でも「最も臭う袋」を1つ選ぶ

3つの袋の中で最も臭う袋を選ぶ。

■注意点
自信がなくても多少曖昧でも必ず選ぶことが大事です。

⑤ 検証:偶然を排除する「3回繰り返し」の法則

偶然の正解を排除するため、このテストを同じタイミングで3回繰り返します(17)

  • 3回中2回以上、C(ターゲット)を当てられた場合
    その地点を「ニオイの発生源」と扱い、次のステップであるニオイの分類に進みます。
    →ニオイの分類はコチラ
  • それ以外
    ニオイの差があまりない状態であり、サンプルを採取した場所が臭い可能性は低いと言えます。
    →それでも不安な場合はコチラ

まずはこの一連の動作で、ニオイの有無を判断します。

このABC方式は、基準(A/B)とターゲット(C)を物理的に分離して比較する設計に基づいています。

これは官能評価室の設計において、外部からの臭気混入を徹底して排除し、比較対象との差異を明確にする思想に準拠したものです(18)

感覚頼りではなく、国際基準に沿った確かな流れで確認する。

長期の嗅覚の麻痺を突破するには、この徹底した仕組み化が不可欠です。

判定に迷った時の「3つの解決策」

  • 袋A・B(基準)がすでに臭い
    袋を取り替え、袋A・Bを作る場所を別の場所に変えて、以後は毎回その場所に固定。
  • 全部同じに思える
    嗅ぎすぎの可能性があります。
    いったん中断して、次は「短く嗅ぐ」「回数を減らす」にする。
  • 香りが強すぎて分けにくい
    香りが強い製品を一度減らしてから、同じ地点でやり直す。

全ての袋が無臭だった場合の「屋外チェック」

3つの袋の空気を3回ずつ嗅いでもニオイを感じなかった場合。

サンプルを採取した場所ではニオイが発生していない可能性は高いですが、それでも不安な場合はニオイの確認を外で行ってください。
風がなくニオイが少ない場所が前提です。

自宅とは全く異なるニオイの場所でチェックする事で、部屋に比べより判別しやすくなります。

外でのニオイチェックでも臭いを感じなかった場合、臭いは発生していないと判断するに十分だと考えられます。

それでも不安な場合

それでも「自分が気付かないだけで部屋が臭いかもしれない」と不安があるなら、後はもう誰か他人を呼んで確認してもらう他ありません。

同居していない、頻繁に来るわけではない人を前提として、友人知人に正直な評価をしてもらう方法に頼ってください。

ただし、外気の中でのニオイチェックでも臭いを感じなかったのであれば、友人知人に頼んでもニオイを指摘される可能性は低い事が予想されます。

【原因診断】特定したニオイの正体を暴く「5つの分類タグ」

ニオイの発生源を特定した後は、その正体を「5つのタグ」のいずれかに分類します。

なぜなら、ニオイの種類によって、取るべき対策の方向性が全く異なるためです。

単に「臭う」と捉えるのではなく、以下のチェックリストを用いてニオイの性質を分類します。

発生源を突き止める「感覚別チェックリスト」

タグ感覚的な目安発生しやすい場所の例
湿気・カビ重く、湿り気を感じるクローゼット、窓際、カーテン裏
酸味・生乾き酸っぱい、または生乾きの布枕、寝具、洗濯物周り、ソファ
アンモニア鼻の奥を刺すような刺激トイレ、排水口、靴箱
油・酸化古くなった油のようなニオイキッチン、換気扇周辺、布製品
香料ミックス人工的、または過度な芳香洗面所、芳香剤、洗剤置き場

原因を切り分けるためのチェックリスト

分類されたタグは、対策を立てるための設計図となります。

それぞれのニオイが発する信号を読み解き、発生源の状況を確認してください。

■ ① 湿気・カビ(微生物の繁殖)

  • 確認ポイント
    壁紙に浮き出た黒ずみや、空気が滞留している閉鎖空間はないか。
  • 背景
    重く湿った空気は、静かに育つカビのサインです。

■ ② 酸味・生乾き(皮脂と細菌の反応)

  • 確認ポイント
    布製品が湿ったまま放置されていないか。寝具に皮脂が蓄積していないか。
  • 背景
    繊維の奥で微生物が活動している場合、特有の酸っぱい反応臭が発生します。

■ ③ アンモニア(分解と腐敗)

  • 確認ポイント
    排水トラップの封水が切れていないか。尿跳ねが蓄積した箇所はないか。
  • 背景
    鼻の奥を刺すような刺激は、排泄物やタンパク質の分解過程で放たれる警告灯です。

■ ④ 油・酸化(油脂の劣化)

  • 確認ポイント
    調理時の油が壁やフィルターに固着していないか。
    ミドル脂臭のような身体由来のニオイが出ていないか。
  • 背景
    酸化した油は粘り強く空間に居座り、時間の経過とともに重いニオイへと変化します。

■ ⑤ 香料ミックス(化学物質の飽和)

  • 確認ポイント
    複数の芳香剤や柔軟剤が混ざり合い、不快な強さになっていないか。
  • 背景
    ニオイをニオイで隠そうとした結果、過剰な芳香がノイズとなって空間を支配している状態です。

場所を特定し、ニオイの性質を定義する。

この一連の言語化こそが、迷走を防ぐための唯一の防波堤となります。

ここまでのプロセスを完了することで、ようやく「何を洗うべきか」「何を捨てるべきか」という具体的な解決策へと着手できます。

再発を防ぐ!週1回の「1行ログ」で住環境を支配する

ニオイ対策において最も陥りやすい罠は、「なんとなく消えた気がする」という主観的な判断で終わらせてしまうことです。

対策の正否を判定し、無駄な作業を繰り返さないためには、数値とプロトコルに基づいた継続的な記録が欠かせません。

スマートフォンや手帳に、以下の項目を1行で記録する運用を開始してください。

対策の効果を可視化する「記録の書き方」

日付調査地点2/3成立か分類タグ今回の対策内容
3/10枕元② 酸味枕カバーと本体の洗濯
3/17枕元×経過観察(検知不能)
  • 2/3成立(○)
    3回中2回以上、ターゲットの袋を正解できた(=ニオイが有意に存在する)。
  • 2/3不成立(×)
    正解数が1回以下、または全く区別がつかなかった(=ニオイが低減した)。

ニオイに勝利した証拠は「当てられなくなること」

ABC方式(3点比較式)の最大の利点は、対策の効果が「検知不能」という明確な形で現れる点にあります。

先週まで「2/3」の確率で容易に特定できていた地点が、対策後に「どれが正解かわからない」という状態に陥ったのであれば、それは実施した対策が的中し、ニオイが閾値以下まで下がった確かな証拠です。

「当てられなくなること」を目指してPDCAを回す。

この逆説的なゴール設定が、感覚の迷走を止め、住環境を論理的にコントロールする力となります。

  1. 特定
    ABC方式で発生源を絞り込む。
  2. 対策
    分類タグに応じた処置(洗浄、除菌、換気など)を行う。
  3. 検証
    翌週、再びABC方式で「2/3」が成立するかを確認する。

もし翌週も「2/3」が成立し続けている場合は、対策の強度が足りないか、あるいは根本的な発生源が他にあると判断し、次の地点へと調査を進めてください。

結論:感覚を捨て「仕組み」で家のニオイを攻略する

「自分の家のニオイは、自分では一生わからない」

この絶望的な生理現象に対する唯一の回答は、あなたの感覚を研ぎ澄ませることではありません。感覚を「仕組み」で補完することです。

今回ご紹介した「ABC方式(ジップ袋法)」は、単なるライフハックではなく、科学的根拠に基づいた「判定システム」です。

最後にもう一度、この記事の要点を整理します。

この記事のおさらい
  • 根拠のないリセット法を捨てる
    コーヒー豆や肌のニオイを嗅いでも、長期的な嗅覚の麻痺(長期順応)は解除されません。
  • 三点比較式で「差」を炙り出す
    基準(A・B)とターゲット(C)を物理的に分離し、強制選択を行うことで、脳のロックを突破します。
  • 「ストロー」でノイズを断つ
    袋自体のプラスチック臭や周辺の空気を排除する一工夫が、判定の解像度を決定づけます。
  • 5つのタグで対策を言語化する
    特定したニオイを分類することで、洗うべきか、捨てるべきか、換気すべきかの迷いが消えます。
  • 「検知不能」を勝利の合図にする
    週1回の1行ログを続け、Cの袋を当てられなくなった瞬間、あなたの対策は「完遂」したと言えます。

ニオイの悩みは、目に見えないからこそ「不安」が膨らみます。

しかし、その正体を特定し、数値化し、記録し続けることで、住環境は必ずコントロール下に置くことができます。

まずは、新品のジップロックとストローを用意するところから始めてください。

あなたの嗅覚が再び「本当の家のニオイ」を捉えたとき、それこそが快適な住環境を論理的に手に入れた証拠だと言えます。

  1. Grosofsky, A., et al. (2011). “Coffee beans: A tool for resetting the nose?” (Vol. 36)PubMed.
  2. Glamour UK. “How to improve your sense of smell”. Glamour Magazine. 2018/10/05.
  3. International Organization for Standardization. (2007). ISO 8589:2007 Sensory analysis — General guidance for the design of test rooms (2nd edition)ISO.
  4. International Organization for Standardization. (2007). ISO 8589:2007 Sensory analysis — General guidance for the design of test rooms (Design Guidance)ISO.
  5. DLG. “Practice guide for sensory panel training, Part 1“. DLG. 2017/07.
  6. DLG. “Expert report 07/2017: Practice guide for sensory panel training (DE)”. DLG. 2017/07.
  7. 千葉県糖尿病対策推進会議. 嗅覚のすごい仕組み—味や記憶にも関連.
  8. Springer. (2013). “Recovery of olfactory sensitivity after adaptation” (Vol. 76)Springer.
  9. Stuck, B. A., et al. (2014). “Subjective Olfactory Desensitization and Recovery in Humans” (Vol. 39)PubMed.
  10. Dalton, P., & Wysocki, C. J. (1996). “The nature and duration of adaptation following long-term odor exposure” (Vol. 5) [Data set]. PubMed.
  11. ASTM International. (2019). ASTM E0679-19 Standard Practice for Determination of Odor and Taste Thresholds By a Forced-Choice Ascending Concentration Series Method of Limits (2019 Edition)ASTM International.
  12. International Organization for Standardization. (2021). ISO 4120:2021 Sensory analysis — Methodology — Triangle test (3rd edition)ISO.
  13. Ministry of the Environment. “Odour Index Regulation and Triangular Odour Bag Method”. Ministry of the Environment, Japan. 2002.
  14. 旭化成.よくある質問
  15. 環境省. “臭気指数及び臭気排出強度の算定の方法”. 環境省. 2006.
  16. Fivesenses. “Standard practice for sensory panel training”. Fivesenses. 2002/08/23.
  17. 環境省. “三点比較式臭袋法の実施について”. 環境省. 2002.
  18. International Organization for Standardization. (2007). ISO 8589:2007 Sensory analysis — General guidance for the design of test rooms (2nd edition) [Data set]. ISO.

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