デートの前は、鏡の前でそれなりに時間をかけます。
髪を整える。
服のシワや汚れを見る。
爪が伸びていないか確認する。
靴も、汚れていれば拭いておく。
相手に不快な思いをさせたくないから、目につく所は一通りチェックする。
ここまでは、多くの人が自然にやっていることだと思います。
ですが、その丁寧なチェックリストから、綺麗にスッポリ抜け落ちている場所があります。
それが、トイレでの振る舞いです。
「♂️トイレの作法なんて、いい大人がいまさら気にすることか?」
そう感じるのは、もっともです。
汚せば印象が下がることくらい、誰でも知っています。
用を足した後に手を洗わない大人も、そういません。
つまり、トイレ作法は「知らないから見落とす」のではありません。
知っているつもりで、意識が届いていないだけです。
髪や服や靴には意識が向くのに、トイレの中でのことは、なぜか身だしなみの枠から外れている。
理由は、はっきりしています。
トイレの中は、誰にも見られないからです。
髪型や靴は人目に触れます。
だから気になる。
ですが、トイレの個室は1人きりの空間で、扉を閉めれば中の振る舞いは誰にも見えません。
見えないものは、気にしようがない。
だから、チェックリストから外れる。
ある意味、当然のことです。
ただ、ここに1つ、見落とされている事実があります。
トイレの中でしたことは、必ずしもトイレの中だけでは終わりません。
この記事では、なぜ誰にも見られないトイレの中の振る舞いが、気になる相手との時間にまで響いてくるのか。
その繋がりを、順を追って見ていきます。
トイレでの振る舞いは、扉の外までついてくる
トイレの個室は、確かに1人きりの空間です。
用を足す姿も、その後の処理も、扉を閉めれば誰にも見えません。
ですが、「見られない」ことと、「外に何も持ち出さない」ことは、別の話です。
トイレの中で処理し切れなかったものは、扉を開けて出た後も、どこかに残り続けます。
その残り方は、大きく2つに分かれます。
1つは、自分の身体や服について外へ出ていく
トイレで処理が甘かった分は、身体や下着や服に残ることがあります。
そして、その服は脱ぎません。
履いたまま、トイレを出ます。
手を洗って、ハンカチで手を拭いて、身だしなみは整った気になる。
ですが、洗ったのは手だけです。
その状態のまま、待ち合わせ場所へ向かう。
その状態のまま、向かいの席に座る。
個室の中で片づけ損ねたものを、そのまま相手のいる場所へ連れて行く。
逃げ場が、どこにもありません。
なお、その「洗ったはずの手」も、洗い方や拭き方が甘ければニオイが残ります。
手洗いに関して、詳しくは👉「手洗いと恋愛の関係と重要性」で解説しています。
もう1つは、その場に残って、次の人が受け取る
身体や服については、自分が運びます。
ですが、便座や床に残したものは、自分と一緒には動きません。
その場に残って、次にその個室へ入る人を待ちます。
自分にとっては「使い終わったトイレ」でも、次の人にとっては「これから使うトイレ」です。
つまり、自分の使用後が、そのまま相手の使用前になります。
これが飲食店の共用トイレで、自分が出た直後に相手が入るなら。
これが相手の家のトイレを借りた後なら。
残したものを最初に目にするのは、その相手です。
■トイレの中の処理が甘いと、何に影響が出るのか
| 残り方 | 行き先 |
|---|---|
| 身体・服につく | 自分が運び、相手との時間へ持ち込む |
| 便座・床に残る | その場に残り、次に入る相手が受け取る |
どちらの道を通っても、行き着く先は同じです。
個室の中で終わらせ損ねたものが、相手のいる場所へ顔を出す。
そう考えると、トイレの中の振る舞いは、扉を閉めた瞬間に完結する話ではなくなってきます。
見られていないから問題ない、ではありません。
見られていなくても、結果だけは外へ出ていきます。
相手が気付く前に対処する、先回りの配慮
個室の中で終わらせ損ねたものが、身体や服について外へ出る。
あるいは、その場に残って次の人へ渡る。
どちらにせよ、行き着く先に相手がいる。
ここまでで、その繋がりは見えてきたかと思います。
ただ、ここで1つ、はっきりさせておきたいことがあります。
相手がそれに気づくとは限りません。
そして、気づかせないことが、この話の目的でもありません。
目指すのは、相手にバレないよう上手く隠すことではなく、そもそも相手のところへ届かせないことです。
残ったものは、汚れとして届くだけではない
便座に水滴が残っていたとします。
次に入った相手は、それを見て、一瞬考えることになります。
拭いてから座るか。
このまま座るか。
それとも、別の個室を探すか。
たかが水滴1つですが、受け取った側には、こうした小さな判断が押しつけられます。
紙が切れていれば、予備を探す手間が渡ります。
流し残しがあれば、もう1度流していいものか、一瞬迷わせます。
そして、直前に使ったのが誰なのか分かる状況なら、もう1つ厄介なものが乗ります。
それを口に出すか、黙っておくか。
この気まずい選択まで、相手に背負わせることになります。
■自分が残したものが与える、相手への影響
| 残したもの | 相手が引き受けるもの |
|---|---|
| 便座の水滴 | 拭くか、避けるかの判断 |
| 流し残し | もう1度流すかの迷い |
| 紙切れ | 予備を探す手間 |
| 気付かれる痕跡 | 伝えるか黙るかの気まずさ |
自分にとっては「ちょっとした残り」でも、相手にとっては「片づけと判断の仕事」に変わっている。
汚れの量は小さくても、渡してしまう手間まで小さいとは限りません。
相手に正しく対処してもらうのではなく、対処する必要をなくしておく。
それが、ここでいう配慮です。
そして、残るのは目に見えるものだけではありません。
ニオイもまた、その場や自分に残ります。
つまり、「対策したはず」と「臭っていない」は別です。
詳しくは👉「清潔にしても臭い男と言われる理由」で解説しています。
エスコートは、当日その場で助けることだけではない
エスコートと聞くと、ドアを開ける、車道側を歩く、といった当日の所作を思い浮かべるかと思います。
どれも、目の前で起きたことに、その場で気を利かせる行動です。
ですが、配慮の効かせ方は、それだけではありません。
相手が困る場面を、そもそも起こさないよう先に手を打っておく。
これも、立派に配慮の1つです。
むしろ、目立たないぶん、こちらのほうが効いていることさえあります。
相手が不快なものを目にしてから、気の利いた言葉でフォローする。
それより、目にするものを最初から無くしておくほうが、当然スマートです。
トイレ作法が担うのは、この「起こさないための配慮」のほうです。
個室の中で片づくものを、外へ持ち出さない。
その場に残さない。
それだけで、相手が引き受けるはずだった手間や気まずさが、最初から発生しません。
誰にも見られない場所での、目立たないひと手間。
それが、相手の見える所での気まずさを、先回りして消しておく。
これが、会う前から始まっているエスコートです。
相手のためだけの話に、聞こえていないか
ここまで読んで、こう感じた人もいるかもしれません。
「♂️結局、相手のために気を遣え、我慢しろって話なの?」
そう身構えたくなるのも、無理はありません。
ですが、この話は、自分が損をして相手に尽くす、という類のものではありません。
むしろ逆で、まず得をするのは自分のほうです。
個室の中で片づけて、いちばん助かるのは自分
個室の中で処理を終えておく。
これで守られるのは、まず自分の衣類です。
下着や服に余計なものが移らなければ、それを身につけたまま1日を過ごす羽目にもなりません。
自宅なら、床や壁が汚れにくくなる。
つまり、後で自分がやる掃除が減ります。
そして、トイレを出た後に「何か残っていなかっただろうか」と、頭の隅で気にする必要もなくなる。
この「気にせずに済む」というのが、地味に大きいところです。
デート中、相手と話しているそのときに、股間の違和感が気になって集中できない。
そんな状態では、せっかくの時間ももったいない話です。
■同じひと手間が、2人分の得になる
| 自分に返ってくるもの | 相手に渡さずに済むもの |
|---|---|
| 衣類が汚れにくい | 気づいても言い出せない気まずさ |
| 自宅の掃除が減る | 便座や床の後始末 |
| 出た後に気にせず済む | 拭く・避ける・探すの手間 |
同じ1つの行動で、自分の損も、相手へ渡す手間も、両方が減る。
だから、これは我慢比べではありません。
最初の動機は「自分のため」でも十分
相手のために、という気持ちだけで動くのは、案外しんどいものです。
ですが、幸いこの話は、そこまで高尚な動機を必要としません。
自分の服を汚したくない。
掃除を増やしたくない。
不潔だと思われる材料を、自分から残したくない。
入口は、こうした自分本位の理由で構いません。
大切なのは、どんな気持ちで始めたか、ではありません。
その行動の結果、相手へ渡る手間まで一緒に消えているか、です。
自分のために片づけた。
その副産物として、相手も気まずい思いをせずに済んだ。
それで、十分に成立しています。
相手のために、と気張らなくていい。
自分のために整えた結果が、そのまま相手への配慮になっている。
そして、動機が自分のためでいいなら、もう一つ都合のいいことがあります。
相手がいる日だけ頑張る、という無理をしなくて済むことです。
この「普段からやっておく」がなぜ効くのかは、記事の後半で改めて触れます。
整えておきたい、5つのトイレ作法
考え方は、ここまでで出そろいました。
個室の中で片づくものは、個室の中で片づけておく。
とはいえ、「片づける」と言われても、具体的に何をどうするのか。
ここが見えないと、結局は動けません。
トイレの中で終わらせておきたいことは、大きく5つに分かれます。
それぞれ、外へ持ち出す問題なのか、その場に残す問題なのか、担当している場所が違います。
まずは全体を、ざっと眺めてみてください。
■5つの作法が、それぞれ受け持つもの
| 作法 | 防ぐもの |
|---|---|
| 座って用を足す | 周りへ飛び散る、目に見えない尿ハネ |
| 最後の一滴を処理する | 後から出て、下着につく残り |
| 外出先で座れる状態を作る | 座りたくない、で作法が崩れること |
| 大便後を仕上げる | 拭いたつもりの、拭き残し |
| 使う前の状態へ戻して出る | 次の人が受け取る、使用跡 |
ここから先は、1つずつ、何のための作法なのかを短く見ていきます。
詳しいやり方は、それぞれの記事に譲ります。
小用は、周りへ広げず、身体にも残さない
小用には、実は別々の見落としが2つあります。
1つは、周りへ飛び散るほう。
立って用を足せば、便器から外していなくても、目に見えない細かなしぶきが床や壁へ飛びます。
これを抑える答えが、座って用を足すことです。
なぜ座るだけでそこまで変わるのか、その中身は👉「男が座って小便すべき理由」で詳しく解説しています。
そしてもう1つが、身体に残るほうです。
用を足し終えて、数回振って、しまう。
その直後に、遅れてわずかに出てくることがあります。
下着を上げた後に出れば、それを受け止めるのは下着です。
そのまま、着替えるまで付き合うことになります。
この「遅れて出る1滴」を下着へ渡さない終え方は👉「尿を下着に付けない3つの習慣」で詳しく解説しています。
座っても、最後を確認しなければ身体に残る。
確認しても、立って飛ばしていれば周りに残る。
片方だけでは、小用は片づきません。
だから、2つで1組です。
「座りたくない」で、作法が止まらないように
自宅では座れても、外出先の便座には座りたくない。
この気持ちは、よく分かる話です。
誰が使ったかも分からない便座に、抵抗を感じるのは自然なことです。
ですが、その抵抗を理由に立って済ませれば、今度はしぶきが自分のズボンへ返ってきます。
結局、外へ持ち出す側の問題に戻ってしまう。
ここで要るのは、「我慢して座る」でも「立って済ませる」でもない、第3の道です。
嫌な気持ちはそのままでも、座れる状態に整えてしまう、という考え方があります。
その「座れる状態の作り方」は👉「外出先で便座に座りたくない気持ちとの付き合い方」で詳しく解説しています。
大便後は、「拭いた回数」で終わらせない
大便の後、何回か拭いて、なんとなく「こんなものだろう」でしまう。
多くの人が、いつもの回数を持っているかと思います。
ですが、拭いた回数と、綺麗になったかどうかは、別の話です。
その日の体調で状態は変わるのに、回数だけを固定していれば、拭き残しが出る日も当然あります。
そしてそれは、下着の中に残り、外へついてきます。
回数ではなく状態で終わりを決める考え方は👉「お尻の拭き残しを防ぐ確認の習慣」で詳しく解説しています。
最後に、次の人のために「使う前」へ戻す
ここまでの4つは、どれも1人で完結し、誰にも見られません。
ですが、最後の一つだけは、性質が違います。
トイレを出た後の状態は、次に入る人の目に、そのまま入るからです。
蓋を閉めて流したか。
ちゃんと流れ切ったか。
自分が使った分の紙は、次の人が困らないだけ残っているか。
難しいことではありません。
背を向ける前に、ひと目だけ確かめる。それだけの話です。
出る前の、この「ひと目」の中身は👉「次に使う人のためのトイレ退出作法」で詳しく解説しています。
5つと聞くと、多く感じるかもしれません。
ですが、1度に全部やろうとする必要はありません。
自分がいちばん残しやすそうなもの。
そこから1つだけ選べば、それで十分です。
「デートの日だけ」では、間に合わない
ここまで読むと、こう考える人もいるかもしれません。
「♂️大事なデートの日にだけ気をつければいい話だよね?」
合理的に思えます。
ですが、ここには1つ、落とし穴があります。
トイレの動作は、これまで数え切れないほど繰り返してきた、身体に染みついた癖です。
頭で「今日は丁寧に」と思っていても、身体はいつもの手順で勝手に動きます。
そして大事な日ほど、考えることは他にいくらでもあります。
店の予約、会話、待ち合わせ。
そちらに気を取られている間に、トイレでは、いつもの癖がそのまま出る。
つまり、「その日だけ」という作戦は、いちばん忘れたくない日に、いちばん忘れやすい。
特別な日のための作法は、特別な日には出てきません。
普段どおりの癖だけが、本番に出ます。
だからこそ、普段から。
幸い、先に見たとおり、この作法は自分のためにもなるものです。
相手のいない普段の日でも、やっておいて損はしません。
その積み重ねが、いつの間にか、考えなくてもできる当たり前になっていきます。
そうなれば、大事な日に、慌てて気を張り直す必要もありません。
まとめ|個室で終わることは、個室で終わらせておく
トイレ作法は、誰も見ていない場所で、自分を綺麗に見せるための行動ではありません。
個室の中で片づくものを、外へ持ち出さない。
その場に残して、次の人へ渡さない。
ただ、それだけのことです。
相手に見つけられてから、謝る。
相手に、拭かせる。
相手に、言うか黙るかを選ばせる。
そうなる前に、自分の1回分を、個室の中で終えておく。
その結果、自分も服の汚れや自宅の後始末を気にせず、相手との時間にちゃんと向き合えます。
正直、「小便1つで、そこまでするのか」と感じる部分もあるかと思います。
ですが、その相手が、気になる人であればこそ。
誰にも見えない場所での小さなひと手間を、やってみる価値はあるのではないでしょうか。
トイレの中で終えられることを、相手との時間まで持ち出さない。
それが、会う前から始まっているエスコートです。
まずは、自分がいちばん心当たりのある1つから。
気軽に、今日のトイレから始めてみてください。


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